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悪魔のトリル [音楽]

ジュゼッペ・タルティーニは17世紀のバロック音楽の作曲家なのだが、彼の最も有名な楽曲に「悪魔のトリル(Trillo del Diavolo)」というヴァイオリンソナタがある。
正式な名称は「ヴァイオリン・ソナタ ト短調」、「悪魔のソナタ」などとも言われている。

ヴァイオリンについては素人で詳しく分からないのだが、この曲は高度なテクニックが要求され、現代でも極めて難易度の高い曲であるという。
曲名のトリルとはちなみに、装飾音のひとつで主要音とそれより2度高い音とを交互に速く演奏して波状の震えるような音を作りだすことなのだが、これをダブルストップで行っていると言うのだから、考えただけで頭が混乱し、とにかく難易で困難、難儀、難局な曲なのだな;といのが漠然と分かってくる。

では、何故「悪魔」なのか?
これには有名な逸話があって、タルティーニが夢によってインスピレーションを得、作曲されたものなのだという。
ある晩の事、タルティーニは自分の魂を悪魔に売り、契約を結ぶ夢を見た。
悪魔の庇護を受けた彼が大成功の人生を収める夢である。
悪魔の持つ叡智と力量に感嘆した彼は「きっと、私よりもヴァイオリンの技法にも秀でているに違いない。」そう考え、試みに自分のヴァイオリンを悪魔に渡し、演奏するよう進めてみた。
悪魔はそれを承諾し、タルティーニの前で即興的に音楽を奏でたが、それは今までに聴いたことも無いような心を奪われる素晴らしく大胆で、美しい旋律だった。

タルティーニは、悪魔の奏でる驚愕のインプロビゼーションにハッとなってベッドから飛び起きると、すぐさまヴァイオリンを手にし、たった今夢の中で聴いた演奏を再現しようと試みた。
長いパッセージをいくつか記憶したいたものの、しかし曲全体をまとめ上げるまでには到底至らなかった。
タルティーニは言う。「私は覚えていることを必死で書き留めました。しかしそれも断片的記憶にすぎません。夢の中で悪魔が奏でてくれた美しい旋律には到底及ぶものではないのです。」
http://www3.zero.ad.jp/j-usui/devil's.wma
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夢によって、ヒントを得るという事例で音楽とは別なのだが、少し似ているので紹介しておく。
19世紀のドイツの化学者フリードリヒ・ケクレはベンゼンの環状構造式を提案した一人である。
タバコの煙の成分で発がん性があるため、一般的になじみは無いが工業用の試薬として広く用いられている。

あるとき、ケクレがストーブの前でうたたねをしていると、蛇のようにうねった原子の夢を見た。するとウロボロス(自らの尻尾を噛み、環状となった蛇、古代の象徴のひとつで無限∞を意味する)があらわれ、自身の尻尾に噛み付きながら回転し始めた。これによってベンゼンの環状構造を思いついたのだという。

この二つの事例は実際のところ、創作とも言われ真偽の程は確かではない。タルティーニの場合、指が6本あったとされ、このため難易度の高い曲もさほどでは無かったという。

朝目覚めて、結構リアルに夢を覚えていたりするものである。でもメモでも取らない限り、その記憶はあっという間に消失してしまう。
結局、なんだか知らないけど悪い夢を見た、で終わってしまう。
昔、全く身に覚えの無い計算式を簡単に解く夢を見たことがある。数学は全く持って不得意だ。
夢の中では予想以上に頭脳が働くのかもしれない。


Tartini: The Devil's Sonata / Andrew Manze

Tartini: The Devil's Sonata / Andrew Manze

  • アーティスト: Giuseppe Tartini, Andrew Manze
  • 出版社/メーカー: Harmonia Mundi
  • 発売日: 1998/03/10
  • メディア: CD


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リッキー・リー「浪漫」 [音楽]

世間はせっかくの3連休だが、大型の台風が日本列島を通過中で九州をはじめ各地に多大な被害をもたらしていて、とてもじゃないが何処かへのんびりお出かけしようというムードではないし、家族もどっか連れてってと言うことも無いので、今日は久々に家でのんびり出来る。
ここのところ、早朝から深夜まで新規の仕事の立ち上げで、目が回るくらいに忙しい。
今日はゆっくり休めるが、明日からまたあわただしい日常がしばらく続く。

今朝はボーッ( ゚ρ゚ )した状態で音楽鑑賞。
リッキーリージョーンズ「浪漫」を聴いている。アンニュイだ。
これは彼女のデビューアルバムにして大ヒット作なのだが、ジャズ、フォーク、ロック、ブルースのエッセンスが程よくブレンドされセンスよく仕上げられている。
明るく弾むような彼女の歌声は大人っぽくは無いのだが、全体的に気だるくも落ち着いた雰囲気が漂う。
つかれきった頭には心地のよい響だ。

名曲「恋するチャック」は、トム・ウェイツとともに共同生活をしていた当時のルームメイトであるチャック・E・ワイスを歌った曲だ。
http://www3.zero.ad.jp/j-usui/3.mp3




浪漫

浪漫

  • アーティスト: リッキー・リー・ジョーンズ
  • 出版社/メーカー: ワーナーミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1997/11/25
  • メディア: CD


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ビックカントリー [音楽]

一発屋という言葉はいつごろから使われはじめたのか分からないけど、70年代以前からすでにそのような人たちが存在していることから、結構古くから使われていた言葉なのかも知れない。
もっとも、後世になって定義が明確化され、さかのぼってこの人は一発屋だった、という不名誉な認定によって、わりと強引に一発屋とされるケースも少なからずあるだろう。
その定義というのがWikipediaに載っているので、そのまま引用してみよう。

一発屋(いっぱつや)とは、デビュー以降、1作品だけがヒットしたがその後ヒットに恵まれないまま引退してゆく、または名前が聞かれなくなってしまう、「花火のような(一度火をつけると美しく燃えるが、燃えカスはごみである)」歌手や作家、映画監督、芸人を指して侮蔑的な意味合いで使われる言葉。

燃えカスはきつい;不完全燃焼ということだ。
認定を受けた人たち、いや世間的にそう広く認知された人たちにとっては、はなはだ不本意なことだろう。
本当に一発で消えていく人たちもいるだろうが、その後地道に活動していたりするのだ。
ただ、そのインパクトの強い一曲のために、それを乗り越える作品が出来ずに苦しんだり、幸運や転機が訪れないままにしぼんで零落してしまっているのが現状だろう。
しかし、考えようによっては不名誉なことでは無い。
インパクトのある一曲のおかげで、我々の記憶に永く留まることになるのだから。

80年代に「インナ・ビッグ・カントリー」という曲を大ヒットさせたビッグ・カントリーという、スコットランドのロックグループ。
リーダーのスチュアート・アダムソンが近年亡くなったため、再生は不可能になってしまっている。
一発屋では無いと思うが、この曲はとにかく強烈なイメージがあるため、自分の中では良い意味で一発屋だ(笑)
バグパイプのようなギターサウンドがいかにもスコットランドやアイルランド風の伝統的な音色なのだが、乾いたビートが若干U2を思わせる。
随所に入るスチュアートの「シャア!!」という掛け声とともに、疾走感のあるサウンドだ。
http://www3.zero.ad.jp/j-usui/2.mp3


THE BEST 1200 ビッグ・カントリー

THE BEST 1200 ビッグ・カントリー

  • アーティスト: ビッグ・カントリー
  • 出版社/メーカー: ユニバーサルインターナショナル
  • 発売日: 2005/06/25
  • メディア: CD


誰が一発屋やねん!!

誰が一発屋やねん!!

  • アーティスト: オムニバス, ディキシーズ・ミッドナイト・ランナーズ, リップス, マイケル・センベロ, フランク・スタローン, シャーリーン, ビッグ・カントリー
  • 出版社/メーカー: ユニバーサルインターナショナル
  • 発売日: 1997/12/21
  • メディア: CD


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Hold on tight to your dream♪ [音楽]

こそっと・・・再開してみます。
音楽記事を再開するにあたり、いくつか個人的にルールみたいなものを決めました。
自分の下手なレビューはとりあえずどうでもいいこととして、問題はいつもいろんなところから検索して引っ張ってくる音楽ファイルの取り扱いなのだ。
引っ張るにしてもやっぱり、相手がいる以上、やはりルールは守る必要がある。無断はいけないですね。
そこまで自覚してるんなら、記事だけでいいだろうよ。と、お叱りがありそうだが・・・
んー;やっぱり、紹介する以上、聴いてもらいたいと思うわけで。
なんというか、下手な言葉で表現するよりも説得力があるわけでして。

そんなわけで、音楽ファイルについて少しばかりの工夫をおこないました。
サイドバーに注釈として記載したら、大げさになったので、止めて簡単にココに記述のみとします。
1.無断直リンは行わない。自分専用のサーバーからのリンクとする。
2.音源は基本的にネットで拾ったものにする。
3.定期的に削除する。(頁がかわればもしくは、サーバー容量の都合)

さて、久々にE..L.Oを聴いています。
季節外れのケータイのCMで、「ザナドゥ」のカヴァー曲が流れていて、ああ、オリヴィア・ニュートン・ジョンってもう還暦迎えるぐらいの歳だったかな・・などと考えながら、ELOのCDを引っ張りだした。
最近の若い人は、ELOを知らなくても「トワイライト」ならよく知ってることとおもいます。
それも良い曲ですが・・自分のイチオシは「Hold On Tight 」
この「ズンズン」というリズムで、朝っぱらからテンションが上がります。
http://www3.zero.ad.jp/j-usui/playlist1.m3u

ベリー・ベスト・オブ・ELO

ベリー・ベスト・オブ・ELO

  • アーティスト: エレクトリック・ライト・オーケストラ
  • 出版社/メーカー: Sony Music Direct
  • 発売日: 2005/07/20
  • メディア: CD


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音楽記事はちょっとお休み・・ [音楽]

音楽記事を楽しみに覗いてくださっている皆様には、誠に申し訳ないんですが
ちょっとの間、お休みします。
と申しますのは、最近苦情を頂きましたもので・・
音楽ファイルそのものに対するものではなく、引用の仕方に問題があったわけです。
やはり、リンクを貼りたければ相手の方にその旨、連絡をするのが当然のマナーであり、その点を怠っていたために問題が発生してしまいました。
自分が今までに引用してきた音楽は、借りているサーバーにアップした以外はほとんど音楽専用のサーチエンジンで拾ってきたもので、そのリンク先のことも考えずに安易に引用してしまったことが大きな間違いだったと思います。

それで、今後の対策的処置を確立するまで、少しお休みする次第です。
もちろん、音楽記事をやめるつもりは全くありませんし、他のカテゴリーも今まで通りに継続します。
(暫定ですが過去の音楽リンクは徐々に外して参ります)
準備が整いましたら、時期をみてまた再開しますので、よろしくお願いします。

話は変わって、前の記事にも書いた通り現在大阪出張中でして、ウィークリーなマンション(ほぼアパート)に住んでいます。
たまに家族を離れるのもいいもんですが、今は孤独な一人暮らしです。
でも、音楽があるから平気です。ネットと音楽が無ければ本当に生きていけないと思います。
海外出張のときもそうだったけど、今回もフル装備に近い機材を持ってきました。
もうほとんど引退間近のダイナブックSS3380V改に外付け2.5インチHD、soundMaxの2.1channelのUSBスピーカー、テレビが無いことを考えワンセグTVチューナー(でもテレビはほとんど見ない;)
USB2.0のカードはLANカードといっしょにスロットに入れられず、排他利用するしかなく面倒;
携帯MP3プレイヤーはクリエイティブのMUVO N200です。
携帯スピーカーはいろいろ試行錯誤で買ってますが、ほとんど軽やかな音色でなかなか良いのがありませんね。
音楽ソフトはwinampをデフォルトで使用。

あ、それと気まぐれにこのブログのバナーを変更してみました。どうでしょうか・・



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「夭折」 [音楽]

「夭折」という言葉は、大意として「若くして死ぬ」という意味で、何らかの不慮の事故や病気などで、すばらしい才能の持ち主なのに早世してしまうケースを指す。
銀幕のスターだったら、ジェームス・ディーン(24)がそうだし、日本だったら赤木圭一郎(21)。
スポーツの世界では「音速の貴公子」アイルトン・セナ(33。5月1日が命日だった。)。K-1のアンディ・フグ(35)も記憶に新しい。
いずれも、不慮の事故であったり、病死だったりだ。
洋楽の世界でもその事例は多い。
バディ・ホリー(22)。オーティス・レディング(26)。デュアン・オールマン(24)ジミ・ヘンドリックス(27)
ジム・クロウチ(30)ジョン・ボーナム(32)ジャニス・ジョプリン(27)サム・クック(33) その他沢山いる。
ミュージシャンは飛行機事故などを除けば、薬物中毒やアルコールの大量摂取等の死因が大半で、華やかな世界とは対照的だ。

バディ・ホリーは飛行機事故で亡くなったが、この人は神格化されロックの神様となっている。
ギター2本にベースにドラムスというバンドスタイルはこの人が編み出した。Beatlesが敬意をはらうミュージシャンはこの人であり、才能全開真っ只中での事故で、本当に「もし生きていれば」と惜しまれる人なのだ。
蛇足だがこの人のヒーカップ唱法という、しゃっくりをするような歌い方は人によっては不快かもしれないが、個人的には嫌いではない。
代表曲は「ペギー・スー」が広く知られているが、あえて「メイビー・ベイビー」を紹介しよう。
http://www.geocities.com/wildest_dreams_37f/buddyholly_maybe_baby.wav

The Buddy Holly Collection

The Buddy Holly Collection

  • アーティスト: Buddy Holly
  • 出版社/メーカー: MCA
  • 発売日: 1993/09/28
  • メディア: CD


サム・クックはモーテルで殺されたことになっているが、本当の死因は謎のままだ。
言わずと知れたR&Bのスーパースターで、かのアレサ・フランクリンの憧れの存在なのだ。
サム・クックの魅力はなんと言っても、独特で圧倒的な声量のテノールだ。
「A Change Is Gonna Come」という、死後に発表された泣ける曲がある。
http://o-dub.com/sounds/soulsides/rm4.mp3
柳ジョージ&レイニーウッドが80年に「WOMAN & I 」という2枚組アルバムの中で、この曲をカヴァーしており、柳氏は敬愛して止まない存在と、言い切っている。
「this little light of mine」
http://www.thesearchforbiblicaltruth.org/gospel__sam_cooke___this_little_light_of_mine.mp3
「Sam_Cookeメドレー1957-1959」
http://www.die-rock-and-roll-ag.de/assets/multimedia/Sam_Cooke_-_1957-1959.mp3

Sam Cooke at the Copa

Sam Cooke at the Copa

  • アーティスト: Sam Cooke
  • 出版社/メーカー: UM3
  • 発売日: 2003/06/17
  • メディア: CD


Portrait of a Legend 1951-1964

Portrait of a Legend 1951-1964

  • アーティスト: Sam Cooke
  • 出版社/メーカー: Universal Music TV
  • 発売日: 2003/06/17
  • メディア: CD


Woman and I...OLD FASHIONED LOVE SONGS(紙ジャケット仕様)

Woman and I...OLD FASHIONED LOVE SONGS(紙ジャケット仕様)

  • アーティスト: 柳ジョージ&レイニーウッド
  • 出版社/メーカー: ヴィヴィッド
  • 発売日: 2005/11/02
  • メディア: CD

上記の二人は、まだこれからという年齢、とくにバディの22歳というのは若すぎる。
生前の活躍が華々しい程、人気者だからこそ、その志半ばの死によって、人々の心に永らく残ることになる。
残されたファンは生きていてほしかったという思いと、もしも生きていたならという思いが加速し、その満たされぬ気持ちは徐々に脚色化され、伝説となり、神格化さえされてくる。
死人に口無しというが、逆に「夭折」は無敵で、心の中で生きていく存在となっていくものなのか。


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インプロビゼーションの名演を聴いてみる。 [音楽]

キースジャレットの「ケルン・コンサート」を聴くたびに感じることなのだが、パート1の出だしの一音から部屋の空気が瞬間的に清浄化されたような錯覚にとらわれる。
どんな状況であろうとも、あたり一面は静寂の世界に包まれてしまう。
非常に緊張感の高いプレイなのに不思議な事だ。しかも即効演奏。

凡人の考えとしては通常、即効で演るというのは演奏者自身がキャリアの中でのテクニックを駆使して一定のパターンで音を繋げて行くようなもの、もっと悪い見かたをすれば、全くの思いつき、デタラメな散漫で退屈な演奏の連続をイメージしてしまうのだが。
しかしキースの「ケルン・コンサート」については、全く違う。別物だ。
インプロビゼーションは、その名の通り即効なのだから、生では二度と聴けないし再現するのも困難だ。
したがって、演奏家の体調なども大いに影響があるだろう。
事実この1975年1月のケルン・コンサートの録音では、キースの体調は万全ではなかったという。
それなのにこの緊張感溢れるプレイ。まさに天才のひらめき。
時おり聴こえるキースのハミング。まるで何かに憑り付かれているのでは?とも思ってしまう。
この当時の演奏をこれだけ優秀な録音状態で聴けるということは素晴らしいことだ。
また、情報量はそれだけにとどまらず、キースが放つ凄まじいまでの集中力とエネルギーを同時に感じ取れる意味において、このアルバムは一聴の価値は充分すぎるほどある。
では、「ケルン・コンサート」からパート1を聴いていただこう。
http://nyouichi1.hp.infoseek.co.jp/keith%20jarrett%20-%20keith%20jarret%20koln%20concert.mp3

ザ・ケルン・コンサート

ザ・ケルン・コンサート

  • アーティスト: キース・ジャレット
  • 出版社/メーカー: ユニバーサルクラシック
  • 発売日: 2005/09/14
  • メディア: CD


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レスター・ザ・ナイトフライ [音楽]

「レスター・ザ・ナイトフライ」はドナルド・フェイゲンが扮する深夜放送の架空のDJだ。
ベルゾニ山の麓にある「WJAZ」という小さな民法ラジオ局からオンエアする曲はもっぱらスタンダードなジャズなのだが、彼の魅力的なトークにより若年層を中心に多くのリスナーを得ているようだ。
お世辞にも広いとは言いがたい室内、吸音目的の穴あき合板の壁には、タイプで打った書類をはさんだクリップボードが掛けられ、タバコのヤニで汚れたような壁かけ時計の針は4時9分頃を指しているが、当然深夜だろう。
大きなターンテーブルと古めかしいストレートなトーンアームを有する業務用のレコードプレイヤーの上にはLPレコードが乗っているが、手前にちらっと見えるジャケットから察すると、恐らくソニー・ロリンズの「ザ・コンテンポラリー・リーダーズ」と思われる。
これから曲をかけようとするのか、それとも曲が終わってトークに移行しようとしているのかのどちらかだが、これまたレトロな形状のディスクトップ・マイクロホンを引き寄せ、両切りのチェスタ・フィールドをくゆらす彫の深い表情のこの男が、「DJ・レスター・ザ・ナイトフライ」だ。

 レスター・ザ・ナイトフライです
 バトンルージュの皆さん 今晩は
 チャンネルは変えずにそのままで
 このあとすぐです

 人生にはさまざまなしがらみがあるものです
 さけられないことですが・・
 お電話ありがとうございます
 今晩も皆さんからのお電話をお持ちしています

 こちら 民放ラジオステーション 「WJAZ」
 ジャズと軽いおしゃべりで
 ベルゾニ山の麓から
 甘い音楽をお届けします
 今宵はあなただけのもの
 夜の帳が明けるまで 東の空が白みはじめるひとときまで

強烈に引きつけられるモノカラーのジャケット。平凡なシーンのようだが実に魅力的で眺めていて飽きがこない。
ジャケ買いという言葉は、このアルバムのためにあるようなものだ。
「The Nightfly 」はスティーリー・ダン活動停止後の82年にリリースされたドナルド・フェイゲンの初ソロアルバム。
80年代A.O.Rのリファレンスといってもさしつかえないこのアルバムの中身のクオリティの高さについては、さまざまな有志の方の賛があるので控えることにするが、現在でもオーディオチェック用として、アナログ、CD共に使用されるケースが多い事からも、このアルバムの完成度の高さが伺える。

では、「The Nightfly 」より一曲「New Frontier 」
http://merovingian.org/link/donald_fagen/nightfly/new_frontier.mp3


Nightfly

Nightfly

  • アーティスト: Donald Fagen
  • 出版社/メーカー: Warner Bros / Wea
  • 発売日: 2002/12/17
  • メディア: DVD Audio


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原付バイクに乗って~となりきんじょ [音楽]

我が地元出身の「となりきんじょ」は70年代に活躍したフォークディオで、知る人ぞ知る全国的に宇都宮で有名なミュージシャン。
たった一枚のレコードは廃盤になり埋もれていましたが、ベルウッド・レコードの30周年記念ということで最近になってCDで復活。
ジャケットは村上春樹さんのハードカヴァーのイラストでも有名なガロ波のイラストレーター佐々木マキさん。

この「原付バイクに乗って」は、自分が中学生の頃、FM栃木でよく流れていた爽やかな曲です。
当時エアチェックしたカセットテープしか手元に無く、最近になってようやく入手しました。
原チャリのテケテケテケテケ~というSEが最初に流れ、なかなかユーモラス。

♪原付バイクに乗って今日も  国道4号線を抜けて
 原付バイクに乗って今日も  学生街の喫茶店に行くのです
 いつもいつ死ぬかと思いながら  車の間を抜けて
 命をかけて  命をかけて
 クリームソーダを飲みに行くのです

 原付バイクに乗って今日も  静かな並木道を抜けて
 原付バイクに乗って今日も  君の住んでる街へ行くのです
 いつも君のことを思いながら  しあわせ色に心を染めて
 命をかけて  命をかけて
 すてきな君に会いに行くのです

 原付バイクに乗って今日も  細い田舎道を抜けて
 原付バイクに乗って今日も  僕らの幸せ探しに行くのです
 いつも夕焼け空のお日様追いかけて あの街からこの街へ
 夢を追いかけて 夢を追いかけて
 みんなの幸せ探しに行くのです

 原付バイクに乗って今日も
 原付バイクに乗って今日も~ ♪ テケテケテケテケ~←原チャリの音

全部というわけには行きませんがサンプルを少しお聴かせします。
http://www3.zero.ad.jp/j-usui/gentukibike.wma

  

ロマンティックマシーン

ロマンティックマシーン

  • アーティスト: となりきんじょ
  • 出版社/メーカー: ベルウッドレコード
  • 発売日: 2004/08/25
  • メディア: CD


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ケイデンスとカスケイド [音楽]

伝説的な名盤「宮殿」の影に隠れてしまい、不遇な存在の2nd。
幸か不幸かスタートでいきなり頂点に達してしまい、分解寸前のクリムゾンを何とか収拾し、体裁を整え取り繕ったフィリップ卿と詩人シンフィールドの努力がにじみ出たアルバムでもある。
これは難しいのだろうけど、どうしても「宮殿」と比較されてしまうし、前作と同じような音作りで2番煎じといわれても仕方がない面はある。
「宮殿」は結果的にバンドを分解に導いてしまったけれども、とりあえずの救済方法も示してくれた訳だ。
コピーと言われようとも、ある意味そうすることが必然だったのかもしれない。
けれどもあえて「宮殿」の存在を抜きにして聴いてみても、動と静の世界がシンメトリカルに表現され、あわただしい実情は全くといって感じ取れないまとまりのあるアルバムである。

やはり、この「ポセイドン」を境に、EL&Pに行ってしまうグレッグの存在が惜しい。
初期のクリムゾンはメロトロンの轟音と、グレッグの古風な美声が看板だったように思う。
前作の「I Talk To The Wind」によく似た 「Cadence and Cascade」はグレッグでは無く、ハスケルがボーカルを取っている。
けたたましいサックスが響く2曲目の「Pictures Of A City」から一転し、暖かい春の野を連想させるこの曲は軽いめまいと虚脱感、眠りを伴う。
ハスケルの評判が良くないのを抜きにしても、やはりグレッグと比べて線が細い。
でも、決して悪い声では無いし、弱々しいが曲のイメージに合っていると思う。

個人的には「宮殿」よりもこの「ポセイドン」の方をよく聴く。なんというか「宮殿」よりもきつい感じが無いのだ。(悪く言えば緊張感が無いということになるのだが;)
初期の4作にはイメージがあって、この2ndは「天・地・火・水」の「水」にあたる。
(確かフロイドも同じような事をやっていたな)
前作が「火」でこれは「水」。このアルバムが聴きやすいのはその辺が要因であると思う・・
では、個人的にも好きな「Cadence and Cascade」。
http://user.chollian.net/~kmployd/music/cadence.mp3




ポセイドンのめざめ+2(ボートラ入り)(紙ジャケット仕様)

ポセイドンのめざめ+2(ボートラ入り)(紙ジャケット仕様)

  • アーティスト: キング・クリムゾン
  • 出版社/メーカー: WHDエンタテインメント
  • 発売日: 2006/02/22
  • メディア: CD


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